S君とN先生

僕の先生
d0251661_07571312.jpg
小学生のとき、少し足し算、引き算の計算や、会話のテンポが少し遅いS君がいた。 
でも、絵が上手な子だった。 
彼は、よく空の絵を描いた。 
抜けるような色遣いには、子ども心に驚嘆した。 
担任のN先生は算数の時間、解けないと分かっているのに答えをその子に聞く。 
冷や汗をかきながら、指を使って、ええと・ええと・と答えを出そうとする姿を周りの子どもは笑う。 N先生は答えが出るまで、しつこく何度も言わせたそうです。 
S君は、N先生が大嫌いだった。 
クラスもいつしか代わり、私たちが小学6年生になる前、 N先生は違う学校へ転任することになったので、 全校集会で先生のお別れ会をやることになったそうです。 
生徒代表でお別れの言葉を言う人が必要になりました。 
先生に一番世話をやかせたSだから、S君が言え、と言い出したお馬鹿さんがいました。 
お別れ会で一人立たされて、どもる姿を期待したのだ。
私は、S君の言葉を忘れない。 
「ぼくを、普通の子と一緒に勉強させてくれて、ありがとうございました。」 
S君の感謝の言葉は10分以上にも及ぶ。 
水彩絵の具の色の使い方を教えてくれたこと。 放課後つきっきりでそろばんを勉強させてくれたこと。 
その間、おしゃべりをする子どもはいませんでした。 
N先生がぶるぶる震えながら、嗚咽をくいしばる声が、体育館に響きわたりました
昨日、デパートのポストカードなどに美しい水彩画にS君のサインがされているのを発見しました。
N先生は今、僻地の小学校で校長先生をしております。学校は教員が少なく、子ども達が家から2時間程かけて登校しなければならないような過疎地へ自ら望んで赴任されたそうです
N先生のお家には、毎年夏になるとS君から絵が届くそうです。 
S君は公立中高を経て、美大に進学したそうですお別れ会でのN先生の挨拶が思い浮かびます。
「S君の絵は、ユトリロの絵に似ているんですよ。みんなはもしかしたら、 見たこと無いかもしれない。ユトリロっていう、フランスの人でね、街や風景をたくさん描いた人なんだけど。空がすごく綺麗なんだよ。」
d0251661_07574309.jpg
「S君は、その才能の代わりに、他の持ち物がみんなと比べて少ない。だけど、決して取り戻せないモノではないのです。そして、S君は それを一生懸命自分のモノにしようしています。これは決して、簡単なことじゃありません!」
d0251661_07580511.jpg
君は、毎年空を描いた絵を送るそうです。 その空は、N先生が作り方を教えた、美しいエメラルドグリーンの心広がる自由な空だそうです。
S君とN先生の心で繋がる二人だけの「空」の世界が存在するようです。
子どもたちの心を開くステキな先生との出会いのエピソードです。

[PR]

by yyyman | 2017-06-19 20:48 | 輝く人 | Comments(0)